川北稔(2019)『8050問題の深層』NHK出版新書.読書メモ

80歳の親が50歳の子を支えるという社会問題に関する本です。

本業の方で8050問題について調べる機会があったため読みました。

この本を手に取ったのは作者の名前。川北稔さんは愛知教育大学教育学部の准教授なのですが、僕はてっきり歴史学者の川北稔だと勘違いして「えー、こんな本も書いてるのか」と購入してしまったというw

本著の内容としては、8050問題に関する調査結果から読み取れる情報や、事例を多く解説しており、どのような問題が起きていて、どのようなアプローチが考えられるかが書かれています。

僕は内閣府の調査やKHJによる報告書に目を通していたので真新しい情報というのは少なかったでしたが、これから8050問題を知りたいという人であれば良き本になるかと思います。

ではいつものように、この本で学んだことを書き留めておきます。

ひきこもりに関する相談所

子どものひきこもり問題を相談する場所といわれて、すぐにピンとはきません。

KHJの調査によると相談先は、

  • 病院
  • 保健所・保険センター
  • 民間のカウンセリング
  • 精神保健福祉センター
  • NPO法人

の順で多く、精神医療関係の窓口が多いようです。

おそらく子どもが精神的な疾患があるという前提のケースが多いのではないでしょうか。

生活困窮者の自立相談支援窓口

地域包括支援センターは80代の親側の支援はできても、50代の子どもの支援は範囲でない。

そこで地域包括支援センターと連携しながら家族全体の支援にあたっているのが、生活困窮者の自立相談支援窓口である。

従来のひきこもり支援や若者支援は39歳までといった年齢制限がある窓口が多いが、自立相談支援窓口であれば年齢や対象を限定としません。

窓口は市役所などの行政が直接運営している場合や、社会福祉協議会などに委託している場合とがあります。

ひきこもり地域支援センター

また、各自治体に「ひきこもり地域支援センター」というのができています。

都道府県や政令指定都市に設置されており、精神保健福祉センターに併設されています。

設置数が少ないのが現状で、自宅から遠く通い続けるのは難しいことが想定されています。

そのような場合は、窓口に電話で問い合わせれば、ひきこもりに関する相談を実施している機関や団体を紹介してもらえるかもしれません。

ひきこもりの解消ではなく家族の支援

ひきこもりの相談では、「ひきこもり状態の解消」がただちに目標となるわけではありません。

家族内の人間関係が悪い場合は、ひきこもりの本人へのアプローチではなく、家族が本人への接し方を変えるよう助言されます。

家族のなかで自然に会話できるようになると、本人が悩みを話したり、家族が支援についての情報を本人に伝えたりすることができるようになります。

伴走型支援

伴走型支援は、生活困窮者の支援で提唱される理念です。

特定の領域に固執せず、多様な制度の知識をもちながら、支援対象者のニーズに合わせた包括的な提案をおこなっていく手法です。

ひきこもり本人のニーズを探るには、趣味や得意なこと、好きな食べ物といった、一見支援とは無関係と思える領域まで情報収集をおこなうことがあります。

伴走型支援では、さまざまな角度から本人や家族との接点を探るようなきめ細かいアセスメントが欠かせません。

受援力

被災地などを中心に、地域のボランティアや外部からの支援を受け入れる力が話題になることがあり、これを「受援力」と表現されます。

受援力をつけるには、日常的に人の助けをうまく借りることを習慣化していくことが大切です。

孤立状態にある人は異口同音に「他人に迷惑をかけたくない」と考え、どのようにSOSを発すればよいかわからない状態に陥っていることが多いそうです。

問題解決に受援力は必要であり、少しずつ会話をし続けるなどその力を引き出すアプローチが重要です。

日本の申請主義

日本の福祉制度は「申請主義」といわれ、利用する側が制度に関する知識をもち、手続きをしなければ利用できません。

これは非常に問題で、福祉の関係機関はもっとサービスや支援の説明が必要だと感じています。

モノを売る企業であれば、商品の概要や魅力を説明するチャネルを持っています。福祉の関係機関はというと説明はかなり少なく、あってもかなり難しい内容ですぐには理解できません。

サービス提供している事業者が制度やサービスの説明を、誰がいつ見てもわかるように用意すべきだと思います。

こどおじの全員が問題ではない

最近「子ども部屋おじさん(こどおじ)」という言葉が話題になっています。いい年して実家暮らしの男性を揶揄する言葉です。

でもそうして実家に暮らしている男性を、自立しない子どもと甘やかす親の構図として捉えてばかりでは危険です。

「別居したいができない」という意見は子どもの方が高く、親の介護や経済的な問題によって実家暮らしを強いられている人もいることも押さえておく必要があります。

KHJの調査報告書を見ていると、親自身が面倒をみてほしいために子どもに退職するよう希望したという事例もありました。一方的な見方をしていては問題を取り違えかねません。

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